樹木希林ラスト主演映画『あん』で描かれた、働くコトと生きるコト

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あんの詰まったどら焼き

樹木希林ラスト主演映画『あん』の追悼上映を観てきた

樹木希林さんのラスト主演映画『あん』の追悼上映があったので観に行った。テーマも脚本も映像も、そしてもちろん演者も素晴らしかった。といっても、作品評を語れるほど映画に詳しくないので、ブログテーマの「働き方」切り口で、感じたことをメモがてら書いてみる。

まず、最初にあらすじを。公式サイトとか新聞記事で書かれてる範囲なので、ネタバレには当たらないかと。

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流行らないどら焼き屋の雇われ店長(永瀬正敏)のもとに、求人募集の貼り紙をみてた70代半ばの徳江(樹木希林)が現れ、働かせてほしいという。最初は難色を示されたものの、粒あん作りをの腕前を見込まれて採用された徳江。彼女の作る粒あんは大評判で、店はまたたく間に繁盛するも、ある日を境に客足がバッタリと途絶える。実は、徳江はライ病(ハンセン病)患者で、心ない差別により客を遠ざけていた。登場人物たちが、理不尽とどう向き合うのかを描いた作品。

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以下、感想。

観測者として、この世を見つめることに、自身の役割を見出した。

印象的なセリフがある。ちょっとググると、いろんなレビューでも引用されてるから、みんなの心に残ってるんだろう。

私達はこの世を見るために、聞くために、生まれてきた。この世は、ただそれだけを望んでいた。…だとすれば、何かになれなくても、私達には生きる意味があるのよ。

http://an-movie.com/story/

樹木希林さん演じる徳江が、アルバイト先のどら焼き屋の店長に宛てた手紙の結びの一文。 ネタバレになるので詳細なシチュエーション描写は避けるけれど、この前に、“自分や、他の誰もが見留めなければ、それは存在しないのと一緒”という趣旨の言葉が挟まる。ここで理系人間はハッとする。これ、完全に量子物理学の観測者効果(リンク先が比較的平易で分かりやすい)。
あらっぽい解説をすれば「世の中は誰かに観測されるまで何にも決まっておらず、存在も定かではない。けれど、ひとたび観測された瞬間、確かな、実在のものとなる」という感じ。徳江が、まったく自己流に、観測者の役割の重要性に気付いて、そこに生きる意味≒生涯の仕事を見出したのに感動した。

働くコトは、この世に発見されるコト

この世を見つめる仕事をまっとうする一方で、徳江さんは、自分自身が世の中から見つけられることも期待していた。そして、それが成就したときに、心から嬉しがった。病気に対する差別で、この世(一般社会)から隔離され、見えない存在として扱われていた彼女にとって、自分の作ったあんを誰かに食べてもらうこと、接客を通して誰かと触れ合うことは、この世から発見されることだったんだと思う。
人は誰でも、観測者としての側面と、被観測者としての側面があるのだろう。どちらか一方に徹することなんて、いかに不遇に慣れようと、老成しようと、達観しようと難しいんじゃないだろうか?

仕事で自己実現とはよく言ったもの

そう考えると、働く意味として自己実現というキーワードを挙げる人が多いのもうなずける。それは、この世から発見されることで、自分の存在を確かなものにしようとする働きなんだと思う。“自己”を実現するために、観測者たる他人の目が必要なのは少々意外な気もするけれど。

そんな映画『あん』、追悼上映が全国で実施されている。1,000円と格安だし、本当にいい映画なので、観に行って損はないと思う。

<シェアをお願いいたします。> 樹木希林さんは、この映画のテーマを広くたくさんの人々へ伝えようと、積極的に様々な場所へお出かけになりました。通常、ベテラン女優(といいますか大女優)が、ここまでプロモーションに稼働いただくことはありません…

映画『あん』さんの投稿 2018年9月20日木曜日

あと、上映前に樹木希林さんの遺作の『日日是好日』の予告編が流れた。「にちにちこれこうじつ」って読むんですね。「ひびこれこうじつ」かと思ってた。禅語で「毎日毎日が素晴らしい」って意味なんだとか。なんか穏やかな空気の流れる作品ですね。希林さんもずっとニコニコしてた。遺作へのふさわしさという点では、『万引き家族』よりも、この『あん』よりも、良い作品なのかも。これも、絶対観に行く。

<追記>

『日日是好日』観てきたのでレビュー書きました。

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